労働基準監督署(労基署)の相談事例|労働局との違い・相談できること
労働者が勤務先との関係で問題を抱えてしまった場合には、労働基準監督署(労基署)に相談するのが良いと聞いたことがある方…[続きを読む]
「コロナで突然給料が減額されてしまった」
「会社は勝手に給料を減額しても問題ないの?」
突然お給料が減額されてしまうと生活に支障が出てしまう可能性もあり、その影響は大きいですよね。
実は、給与の減額がなされるケースは主に4つのケースがあり、それぞれ要件を満たす必要があります。
また、減額できる上限が定められている場合もあり、この場合はいきなり高額の給料を減額することもできません。
そこで、この記事では、どのような場合に給料の減額が認められるのか、給料を減額できる上限ともし給料が減額されてしまった場合の相談先について解説します。
目次
給料の減額がなされるケースとしては、以下の4つのケースがあり、それぞれの場合によって要件が異なります。
そこで、以下では4つのケースについて、給与の減額が認められる要件について解説します。
「給与」は会社と労働者との間で締結されている労働契約で定められた「労働条件」です。
この労働条件については、会社と労働者が同意をすれば変更することができます(労働契約法8条)。
つまり、労働者が給与の減額に同意をすれば、給与の減額は「適法」となります。
会社が給与の減額をもちかける理由としては、業績の悪化や労働者の能力不足が考えられます。
労働者としては、減給は生活に大きな影響を及ぼしかねないので、会社から減給について合意を求められた場合には、いくら減給されるのか、減給の必要性はあるのかなど、会社から十分な説明を受けて慎重に検討するようにしましょう。
会社の就業規則で定められた内容も、会社と労働者との間の労働条件となっています。
そして、この就業規則に定められた給与の内容を変更することによって減給をすることも可能です。
ただし、減給は労働者にとって不利な内容となるため、この場合も原則として就業規則の変更について労働者の同意が必要となります(労働契約法9条、10条)。
もっとも、仮に労働者の同意が得られなかったとしても、変更した就業規則を労働者に周知させて、かつ就業規則を変更することが合理的といえる場合には、就業規則の変更が認められてしまいます。
つまり、労働者の同意を得るか、労働者への周知と変更の合理性という要件を満たせば、就業規則の変更による減給は適法となります。
管理職を降格させてその管理職手当の支給を停止することによって減給されることもあります。
たとえば、部長を課長に降格させて、それまで支給していた部長職としての役職手当を課長職としての役職手当まで下げるということが考えられます。
また、これまで課長職についていた労働者を課長職から外して課長職としての役職手当を停止するということもありえます。
管理職の降格による減給は、会社の人事権行使によるもので、会社に広い裁量が認められています。そのため、退職に追い込むことを目的としたものや有給休暇の取得を理由としたものであるなどの不当な内容でない限り、原則として減給は適法となります。
労働者が問題行動を行なった場合に、その問題行動が就業規則に定められた懲戒事由に該当することを理由として、懲戒処分としての減給がなされることもあります。
この場合、減給処分が問題行動の内容と比して重すぎる場合は、法律上無効になります。
たとえば、5分の遅刻を1回だけしかしていないのに減給処分とすることは、問題行動が軽微であるにもかかわらず、処分が重すぎると考えられるため、無効となる可能性があります。
また、本人に弁明の機会を与えるなど就業規則に規定された手続きが守られなかった場合も処分が無効となる可能性があります。
そのため、もし懲戒処分を理由として減給がなされた場合は、就業規則の内容をよく確認して、減給処分が相当かどうかについて検討する必要があります。
上記4つの減給がなされるケースのうち、懲戒処分によるケースについてのみ、法律上減給の上限が定められています。
つまり、それ以外のケースについては法律上減給の上限はありません。
懲戒処分によって減給する場合は「1回の懲戒処分につき1日の平均賃金の半額」までしか減額できません。
また、懲戒処分が複数回あった場合でも、賃金総額の10%しか減額することはできません。
したがって、これ以上の減額がなされた場合には、違法な減額となります。
平均賃金は、減給処分が発生した日以前3ヶ月間の賃金の総額÷3ヶ月間の暦日数で求めることができます。
たとえば、月給30万円で減給処分が4月1日になされた場合、平均賃金は30万円×3ヶ月÷90日(1月から3月までの暦日数)=10,000円となります。
1日の平均賃金が10,000円なので、1回の懲戒処分で減額できるのは10,000円×1/2=5,000円までとなります。
また、たとえ懲戒処分が複数回なされたとしても、1ヶ月の減額の上限は30万円×10%=30,000円までとなります。
懲戒処分による減給の場合は、就業規則において「処分内容の決定前に本人の弁明を聴取するものとする」などの手続きが定められていることがあります。
この場合、本人に全く何の連絡もなく減給とすることはできません。
また、当然ながら労働者の同意がなければ減給できない場合に、本人に連絡もせずに同意を得ていなかった場合は違法となります。
会社が一方的に減給をした場合であって、それに納得できない場合には、以下のような対処法をとることが考えられます。
会社が一方的に減給をして、それに納得ができない場合には、まずは会社に対して減給に異議を申し立てる旨の通知を内容証明郵便でだしておく必要があります。
これは、会社に対して何も主張しなかった場合には、黙示的に減給に同意したととらえられかねないからです。
そして、この通知は口頭ではなく書面で内容証明郵便として出しておくとよいでしょう。
なぜなら、口頭で伝えた場合は後から異議がだされたことを会社に否定されてしまう可能性があるからです。
場合によっては、内容証明を出す段階で弁護士に依頼しておくと、会社が話し合いに応じてくれる可能性が高くなることもあります。
そして、会社が話し合いに応じてくれる場合には、減給について話し合いを行うことになります。
会社に内容証明郵便を送っても会社が話し合いに応じてくれずに解決しなかった場合には、労働お基準監督署の労働局に紛争解決の相談をすることができます。
労働局は、各都道府県に設置されており、労働者と会社との間に生じた労働トラブルについて必要に応じて助言や指導を行ってくれます。
労働局に相談しても解決しない場合には、弁護士に相談して、会社に対して減給を取り消すよう交渉してもらうことも考えられます。
また、弁護士が会社と交渉しても解決しない場合には、さらに労働審判や労働訴訟を利用することも考えられます。その場合も、弁護士を代理人とすることができます。
以上のように、減給がなされるケースには4つのケースがあり、それぞれで認められる要件が異なります。
そして、懲戒処分による減給では、減給の上限は1日の平均賃金の半額もしくは1ヶ月の給与の10%までとなっています。
もしコロナの影響などにより、違法な減給を受けてしまったら、労働局や弁護士に相談するようにしましょう。