労働審判とは|費用や流れ、有利に運ぶためのポイントを解説

労働法

給料の未払いなどの労働問題を解決するための手段の一つとして「労働審判」があります。

この記事では、労働審判とはなにか、どのような労働問題が対象なのか、その手続きの流れ、費用、勝率、期間や勝つために有利に運ぶためにはどのようなポイント、訴訟への移行などをわかりやすく解説していきます。

労働審判とは

労働審判は、解雇や給料の未払いなど、個々の労働者と事業主(会社)との間の労働関係のトラブルを、迅速、適正かつ実効的に解決するための裁判手続きの一つです。

通常の裁判とは異なり「非公開」で行われます。

労働審判は、労働審判委員会が行い、構成としては、労働審判官(裁判官)1名と労働関係に関する専門的な知識と豊富な経験を持つ労働審判員の2名です。

これらの者が中立、公正な立場で審理・判断に加わることとなります。

労働審判の対象になるもの

すべての労働問題が、労働審判の対象になるわけではありません。

労働審判は、個々の労働者と会社との間の労働関係のトラブルを解決するための制度ですので、労働組合が当事者になるいわゆる集団労働関係紛争や公務員の雇用が問題となる行政事件は対象とはなりません。

個々の労働者と会社との間の労働関係のトラブル、つまり、解雇、給料(残業代)の未払い、パワハラ等のハラスメントにより生じる会社に対する損害賠償請求、などが対象の例として挙げられます。

労働審判手続きの流れ

1.申立て

労働審判は、まず「地方裁判所」(一部支部でも可)に申立書等を提出することで開始されます。

この申立書は、通常の裁判手続きにおける訴状に類似するもので、申立てを行う労働者等の労働問題についての主張を明らかにし、裁判所に訴えるものです。

主な内容としては「申し立ての趣旨」と「申し立ての理由」を記載しなければなりません。

申し立ての趣旨は、会社に何を求めているのかを明らかにする必要があります。例えば、給料が未払いであれば、具体的な金額の支払いを裁判所が会社に命じる記載が申し立ての趣旨となります。

申し立ての理由は、もちろん、給料の支払い期日が経過しても支払われるべき賃金が支払われていないとの事実を記載する必要があります。

申立書の作成は、専門的な法律の知識を必要とする場合が少なくないため、専門家である弁護士に依頼するほうが無難でしょう。

2.期日指定・呼出し

申立てがされた場合、その日より「40日以内」の日の第1回目の期日が指定され、労働者、会社の双方が呼び出されることとなります。

また会社へはこの時点で呼出し状と労働者の作成した申立書が送付されることとなります。

3.答弁書等の提出

会社側は、裁判所より呼出し状と申立書を受け取れば、裁判所より指定された期限までに「答弁書」を作成し、提出しなければなりません。

答弁書とは、労働者の申立て(申立書)の記載に対し、会社側の主張を記載した書面をいいます。

内容としては、例として労働者側に事実の誤認があるのであれば、申立ての内容を認めない趣旨の主張を明らかにし、労働者側の各主張について、認めるか認めないかを明らかにし、そのうえで反論及び会社側の主張を記載することとなります。

4.期日における審理

労働審判委員会は、原則として3回以内の期日の中で、争いとなっている事実を整理し、労働者や会社関係者から事情を聴取するなどの審理を行うこととなります。

5.調停成立

労働審判委員会は、3回の期日の中で労働者、会社側双方の主張を考慮し、話合いでまとまると考えた場合には、双方に「調停」を促します。

ここで話合いがまとまり、調停が成立すれば、労働審判手続は終了します。

調停で合意された内容は調停調書に記載されることとなり、場合によっては強制執行をすることができます。

例えば、会社に未払いの賃金の支払いを労働者にすることと記載されていたなどの場合に、会社側が調停された内容に反して、労働者に賃金の支払いをしない場合には、労働者は調停証書に基づいて会社に賃金の支払いを強制的に求めることができます。

6.労働審判

3回の期日の中で話合いがまとまらない場合は、労働審判委員会は、審理によって認められた事実から、事案の実情に即した判断(「労働審判」といわれます)を示します。

これは、通常の裁判手続における判決に類似する裁判所の判断といえます。

この労働審判に対し、2週間以内に労働者、会社のいずれかあるいは双方が異議の申立てをしなければ、労働審判が確定し、手続きは終了します。

労働審判が確定すれば、すでに解説した調停と同様に、場合によっては強制執行を申立てることもできます。

労働審判で労働問題が解決するまでどれぐらいの期間がかかるの?

労働審判は、労働者と会社の労働に関する問題を迅速に解決するための制度です。

そのため、通常の裁判手続であれば、基本的には何年もかかるのに対し、比較的早期に解決するように、期日も原則3回までとするなどの制度となっています。

事案の内容によりますので一概にどれほどの期間がかかるというものはいえませんが、申立てから終了まで「平均約2カ月から約3カ月前後」といわれています。

労働審判の手続きにかかる費用|印紙代

労働審判の申立てをする場合に裁判所へ納付する手数料として印紙を貼付しなければなりません。

印紙の額は一律に定まっておらず、請求する金額により決まります。請求する金額が高くなればなるほど貼付する印紙の額も高くなります。

例として、会社へ未払いの賃金100万円の支払い請求をする場合であれば、貼付する印紙は5000円となります。

これに加えて、郵便切手を先に裁判所に渡す必要もあり、この切手の種類や価額も様々です。

以上が手続きに必ず必要となる費用となります。

さらに弁護士に労働審判の代理人や書面作成の依頼をする場合であれば、「別途、弁護士費用」がかかることとなります。

労働審判における労働者側の勝率は?会社側が有利なの?

労働審判における労働者側の勝率や会社側・労働者側どちらが有利なのかについては、明確な統計がないことから、一概にはいえません。

もっとも、労働審判手続では、約7割が調停が成立し、紛争が解決していますので、労働審判制度を利用した労働者、会社の約7割が納得して紛争を解決できているといえます。

労働審判に勝つには|手続きを有利に進める方法とポイント

1.証拠を集めておく

労働審判手続きを有利に進めるために欠かせないものは、証拠といえます。なぜならば、労働審判を担当する労働審判委員会に主張の根拠として証拠があり、主張している事実があったとの心証を抱かせることが有利に進めることで重要と考えられるためです。

そのため、申立て時点で証拠を収集しておくことが重要となります。

例えば、給料の未払いであれば、次のようなものが証拠となります。

  • ①雇用契約書(労働条件や内容がわかるもの)
  • ②タイムカード
  • ③出勤簿
  • ④業務報告書
  • ⑤給与明細
  • ⑥就業規則

これらによって、雇用関係があることと、具体的にどれほどの給料の支払いを会社はしなければならないのかなどが明らかとなれば、有利に進めることができます。

2.労働問題に強い弁護士に相談する

労働審判の手続きでは、関係する法律の知識が必要となることが少なくありません。またどのような主張や証拠が有利に進めるために有効であるのか、どのような交渉をすることが有効であるのかは豊富な経験がなければ判断することが困難といえます。

そのため、労働問題、トラブルについて詳しく、経験の豊富な弁護士に相談することが無難といえます。

また弁護士は、労働審判で労働者の代理人として行動することができますので、代理人となるように依頼したほうが有利に進めることができるでしょう。

労働審判に異議申し立てがなされた場合|訴訟移行

当事者が異議の申立てをしなければ、労働審判は確定し、場合によっては強制執行が可能となります。

しかし、異議の申立てがされた場合には、労働審判は効力を失い「通常の訴訟手続に移行」することとなります。

そのため、労働審判の制度は、会社側が労働審判に結果に対し、異議の申立てを行えば、労働関係のトラブルは解決することができないといえるので、このような場合には解決の実効性に欠けるといえるでしょう。

まとめ

労働審判は、解雇や給料の未払いなど、個々の労働者と(会社)との間の労働関係のトラブルを、迅速、適正かつ実効的に解決するための裁判手続きの一つです。労働審判の対象は個々の労働者と会社における労働上のトラブルです。

労働審判は、労働者の裁判所への申立書の提出から始まり、その後会社が答弁書を作成し、裁判所より指定された期日で労働審判委員会が当事者双方に事情を聴取するなどにより行われます。

期日での審理の結果、当事者双方の話合いがまとまれば調停が成立し、労働審判は終了します。調停調書では、場合によってはこれを用いて強制執行が可能となります。

当事者双方の話合いがまとまらない場合には労働審判員会により労働審判が行われます。当事者がこれに対し、異議の申立てをしない場合には、労働審判は終了し、場合によっては労働審判に基づき強制執行が可能です。

当事者により、異議の申立てがなされた場合には通常の訴訟手続に移行することとなります。労働審判では専門的な知識と経験があるほうが有利に進めることができますので、弁護士に相談する方が無難と言えるでしょう。

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