パワハラで訴えるには|方法・裁判までの流れ・負けない準備を解説

職場は一日のうちでもかなりの時間を過ごす場所です。

もし職場の上司から度重なるパワハラを受けてしまった場合、被害者の方が受ける精神的ダメージは計り知れません。

例えば、自衛隊と上司、医者と看護師、校長と教師、大学生と教授、実習でのパワハラなど枚挙にいとまはありません。

パワハラ上司に対しては、訴訟を提起して損害賠償を請求することが考えられます。ただし、被害者の方が訴訟で勝つためには、事前の準備が必要不可欠です。

この記事では、パワハラ上司を訴えるにはどうするのか、その際の方法や流れや、事前に準備すべきこと、パワハラで訴えた人が負けにならないための裁判のポイントなどについて解説します。

パワハラ上司を訴えるまでの流れ・方法は?

まずは、パワハラ上司を実際に訴えるまでの流れと方法について解説します。

弁護士に相談・依頼をする

訴訟を提起する場合、法律の専門家である弁護士に相談・依頼をすることが必須といえます。
弁護士は訴訟の手続きや法律の内容を熟知しているため、どのように訴訟の準備をすればよいか、どのような主張をするのが効果的かについてアドバイスを受けることができます。

パワハラ上司を訴えようと考えた場合、まずは弁護士に相談をするところから始めましょう。

誰を訴えるか、どのような主張をするかを検討する

弁護士に依頼をしたら、弁護士とともに訴訟の戦略について話し合います。

パワハラ上司を訴える際には、同時に安全配慮義務違反(従業員が職務上損害を被らないように配慮する義務)を理由として会社を訴えることも考えられます。
そのため、上司のみを訴えるのか、あるいは会社も併せて訴えるのかを検討する必要があります。

また、訴訟においてどのような主張をするかについても、実際に訴訟を提起する前に十分検討しておきましょう。
訴訟では、自分の主張を証拠によって立証しなければなりません。
よって、どのような主張であれば手持ちの証拠で立証可能かということを考えながら、主張の戦略を立てることになります。

証拠を集める

訴訟における主張内容を検討することと並行して、訴訟で提出する証拠を集めておく必要があります。
どのような証拠を集めればよいのかは後で解説します。

どこに訴える?訴状を作成して裁判所に提出する

訴訟の準備にめどが付いたら、いよいよ訴えます。

どこに訴えるかというと、裁判所に対して訴状を提出します。

訴状は、事件について管轄権を有する裁判所に提出する必要があります。

パワハラで上司を訴える場合には、以下のいずれかの地を管轄する裁判所に訴状を提出します。

  • ①上司の住所(民事訴訟法4条1項、2項)
  • ②パワハラを受けたオフィスの所在地(同法5条9号)

なお、安全配慮義務違反を理由として会社を同時に訴える場合、会社の本店所在地を管轄する裁判所にも訴状を提出することができます(同法4条4項)。

会社と上司を共同被告として同時に訴える場合には、それぞれに対してばらばらに訴状を提出する必要はなく、上記のいずれかの管轄を有する裁判所に訴状を提出すれば足ります(併合請求における管轄、同法7条)。

パワハラ訴訟はどのように進行する?

実際にパワハラ上司や会社に対して訴訟を提起した後、訴訟の手続きがどのように進行するかについて解説します。

訴状の提出・被告への送達

原告である被害者が裁判所に対して訴状を提出すると、その訴状は被告である上司・会社に対して送達されます(民事訴訟法138条1項)。

第1回口頭弁論期日

口頭弁論とは、原告・被告が法廷の場で互いに主張を行い、裁判官がそれを聞いて判決内容を検討する際の判断材料とする手続きをいいます。
訴訟が提起されると、裁判所から第1回口頭弁論期日として数週間後の日程が提示されます。

原告および被告は、第1回口頭弁論期日に出席して、法廷の場で主張を戦わせることになります。
とはいえ第1回口頭弁論期日は、原告提出の訴状と、被告提出の答弁書の内容を、互いに陳述することを確認する程度で終了することがほとんどです。
その場合、本格的な審理は第2回口頭弁論期日以降となります。

なお、当事者のいずれか一方が第1回口頭弁論期日に欠席した場合には、欠席当事者が訴状・答弁書の内容を陳述したものとみなした上で、出席当事者の弁論が行われます(民事訴訟法158条)。

第2回以降の口頭弁論期日

第1回口頭弁論期日からおおむね1か月後に、第2回口頭弁論期日が設定されます。

第2回口頭弁論期日以降はより実質的な審理に入ります。
具体的には、毎回当事者が提出する準備書面の内容についての裁判所からの質問が行われたり、証人がいる場合には出頭の上証言をしてもらったりという手続きが行われます。

口頭弁論期日は、裁判所が判決をするのに十分な心証が形成されたと判断するまでは、必要なだけ何度でも設定されます。
そのため、事案によっては裁判が長期化することもしばしばです。

なお、第1回口頭弁論期日に欠席した当事者が、第2回口頭弁論期日も欠席した場合、擬制自白(相手の主張を認めたとみなされること。民事訴訟法159条1項、3項)が成立して、出席当事者の言い分が全面的に認められます。

和解勧告

訴訟が進行する中で、裁判所は当事者に対して和解の提案をすることがあります(民事訴訟法89条)。

原告・被告の双方が和解案に納得して受け入れる場合には、裁判上の和解が成立して訴訟は終了します。
一方、どちらか一方でも和解案を受け入れない場合には、引き続き訴訟が続くことになります。

判決

口頭弁論の中で、裁判所が十分な心証を形成したと判断した場合、口頭弁論の手続きは終了となり、その後判決が言い渡されます。

上訴or判決確定

判決内容に不服がある当事者は、判決書などの送達を受けた日から2週間以内に、上級裁判所に対して上訴(控訴または上告)をする必要があります。

もしいずれの当事者からも上訴がなかった場合には、判決は確定します。
判決が確定すると、確定判決の正本を債務名義として、被告である上司や会社に対して強制執行の手続きを取ることができるようになります。

パワハラで訴えた人が負けないようにするための準備は?

パワハラ訴訟で勝訴するために、パワハラで訴えた人が負けにならないために、事前の周到な準備と方法が必要になります。

具体的にどのような準備と方法が必要となるかについて見ていきましょう。

パワハラで訴える時に証拠がないは困る→証拠を集める

訴える際に、証拠がないと困ります。

訴訟においては、主張の立証は証拠により行う必要がありますので、適切な証拠を収集することが重要なポイントとなります。

パワハラ訴訟においては、まずパワハラが行われたという事実を原告の側で立証しなければなりません。

たとえば、以下のような証拠を収集した上で、裁判所に対して提出することが有効になります。

  • パワハラ的な文面が含まれた業務上のメール
  • パワハラ的な言動の録音
  • パワハラ的な指示に基づき長時間労働をしたことを示す勤怠記録
  • 被害者(原告)の日記

また、実際にパワハラが行われていたことを知っている、または目撃したことのある同僚の証言が得られれば、訴訟における強力な証拠となります。

精神的損害に関する医師の診断書を取得する

パワハラを理由として上司・会社に損害賠償を請求するためには、パワハラによって原告が実際に精神的損害を受けていたことを立証する必要があります。

精神的な損害を立証するために最も有効な証拠は、医師の診断書です。
診断書の中で、上司からのパワハラが原因で通院治療を受けていたこと、実際に精神疾患の症状が見られることを明記してもらうことができれば、原告がパワハラにより精神的損害を受けたという事実を立証することは容易になります。

診断書にどういった内容を記載してもらえば良いかは、訴訟を見据えた法的な検討事項となります。
そのため、弁護士から記載内容についてのアドバイスを受けた上で、主治医に対してその内容を診断書に記載してもらえるようにリクエストすることをおすすめします。

弁護士と当事者尋問についての打ち合わせをする

訴訟の場では、原告・被告双方に対して、裁判所やそれぞれの弁護士から質問をする場面があります。
これを「当事者尋問」といいます(民事訴訟法207条1項)。

当事者尋問において原告が回答した内容は、訴訟の中で証拠として取り扱われます。
そのため、うっかり原告に不利な内容を話してしまうと、判決の内容に響いてしまう可能性があります。

当事者尋問では、当日になるまで何を聞かれるのかわからないものの、ある程度質問を予想して回答を準備しておくことはできます。
当事者尋問で取り乱してしまうことを防ぐためにも、事前に弁護士と入念な打ち合わせをしておくことがポイントです。

同じ上司からパワハラ被害を受けている同僚と連携する

もし同じ上司から原告同様にパワハラ被害を受けている同僚がいる場合には、共同で訴訟を提起することも有効な手段となります。

複数の従業員が同じ上司からのパワハラ被害を訴えている場合、裁判所としても、上司がパワハラ行為を行っているという印象を抱きやすくなります。
また、同僚と協力してパワハラの証拠を集めることができるため、訴訟における主張・立証の準備も容易になるでしょう。

パワハラ被害を訴える際は消滅時効に注意

パワハラ被害で上司や会社を訴える場合、損害賠償請求権には消滅時効が存在します。
そのため被害者としては、損害賠償請求権の消滅時効が完成しないよう、できる限り迅速な対応を行う必要があります。

上司本人に対する請求は不法行為|消滅時効は3年

上司による部下へのパワハラ行為は、民法上の不法行為(民法709条)に該当します。

不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、「損害および加害者を知った時から3年」です(民法724条1号)。
パワハラの事例では、最後にパワハラ行為が行われたことを被害者が認識した時から3年で消滅時効が完成してしまいます。

会社に対する請求は安全配慮義務違反(債務不履行)|消滅時効は5年

一方、会社に対して上司のパワハラを理由とする損害賠償を請求する場合、会社の安全配慮義務違反を主張することになります。
安全配慮義務は、会社が従業員に対して負う労働契約上の義務ですので、安全配慮義務違反は民法上の債務不履行に該当します(民法415条1項)。

債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、「権利を行使することができることを知った時から5年」です(民法166条1項)。
パワハラの事例では、最後にパワハラ行為が行われたことを被害者が認識した時から5年で消滅時効が完成します。

早めに内容証明郵便を送付して消滅時効の完成を猶予する

消滅時効の完成を阻止するためには、弁護士に早めに相談をして、上司や会社に対して内容証明郵便を送付しておくことが肝心です。

内容証明郵便の送付は、民法上の「催告」(民法150条1項)に該当し、送付から6ヶ月間は時効の完成が猶予されます。
この6ヶ月間の猶予期間のうちに、上司や会社に対して正式に訴訟を提起すれば、消滅時効の進行をリセットすることが可能です(民法147条1項1号)。

まとめ

パワハラで上司や会社を訴えるためには、訴訟の流れを踏まえた事前の証拠収集などの準備が重要なポイントとなります。今回はパワハラで訴えるにはどうすればいいか、方法や訴えた人が負けないポイント、

もし上司からパワハラを受けてしまったという場合には、有利にパワハラ訴訟を進めるため、お早めに弁護士へご相談ください。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
本記事は労働問題弁護士カフェを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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