不当解雇とは|違法なの?条件や法律、適法な解雇との違いをわかりやすく解説
会社に雇われている労働者が、ある日突然の解雇をされてしまうと、その日から生活の糧を失ってしまうことになりかねません。…[続きを読む]
会社の業績が芳しくないための人員整理や、会社内でトラブルを起こした等の理由から「退職勧奨」が行われることがあります。
会社が退職を促す退職勧奨は適法なのでしょうか?パワハラではないのでしょうか?
また、辞めるように仕向けられた場合、自主退職を促された場合には、労働者としてどのように対応すればよいのでしょうか?
目次
退職勧奨とは、会社が労働者に対して「自主退職をするよう説得」することをいいます。
このとき、労働者側は「自主退職を促された」「遠回しに退職を勧められた」と感じるはずです。
会社と労働者との間には労働契約が締結されています。それゆえ労働者は会社で労働する義務、そして会社は賃金支払い義務を負うことになります。
この労働契約は、当事者の合意により解除することが可能です。
そこで会社は、人員整理の必要性がある場合や、労働者とのトラブル、労働者の勤務態度の不良、能力不足等の理由から、労働者に退職勧奨を行うことがあるのです。
退職勧奨と解雇は異なるものです。先述のように退職勧奨は、会社が労働者に対して退職をするよう働きかける活動です。
つまり、会社が退職勧奨をしても労働者がこれに応じない限り、労働契約関係は解消しません。
他方で解雇は、会社による一方的な意思表示により労働契約関係を解消するものです。
そのため、解雇が有効な場合、労働者の意思に関わらず、労働契約関係は終了します。
ただ、解雇は法律上厳しい制限がされています。そのため会社から解雇すると宣告されても、解雇が有効とされるケースは限られています。
よって、会社は労働者との労働契約関係を解消するために、まずは退職勧奨をし、これに応じない場合に解雇を検討することが多いでしょう。
退職勧奨そのものを禁止した法律上の規定は存在しません。
退職勧奨は労働者に退職を促すだけのものです。
解雇のように直ちに労働者に不利益を科すわけではありません。
そのため、会社が退職勧奨をしたからと言って直ちには違法とはならないのです。
ただ、会社から退職勧奨を受けた場合、労働者としてはこれに応じざるを得ないと考えこれに応じてしまったり、また不当な退職勧奨がされたりすることがあります。そのような場合には、退職勧奨が違法になることがあります。
この点について、日本アイ・ビー・エム事件判決(東京高判平成24年10月31日労経速2172号3頁)を見てみましょう。
具体的に言えば、下記のような場合などには、退職勧奨は違法となる可能性があります。
パワハラとは、①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動で②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり③労働者の就業環境が害されるもの、をいいます。
退職勧奨=違法とはならないのと同様に、退職勧奨=パワハラとなるわけではありません。
ただ、退職勧奨の際に暴力や強迫が用いられた場合に、退職勧奨がパワハラにあたることもあります。もっとも、パワハラに至らない程度の行為でも退職勧奨が違法とされるケースはあるでしょう。
退職勧奨がされても、労働者がこれに応じる義務はありません。
そのため、会社からの退職勧奨を無視し、そのまま労働者として会社で働くことはできます。もっとも、退職勧奨をされた場合には、その会社に居づらくなる方も多くいるでしょう。
労働者としてはその会社で働きたいか否かで対応は異なります。そのため、退職勧奨の対応としては、その会社に残りたい場合と辞めてもよい場合で分けて考える必要があります。
その会社に残ってこれからも働き続けたい場合には、退職勧奨について丁重にお断りすればよいです。
退職勧奨に応じない限り、労働契約関係は継続するため、退職勧奨を拒絶ないし無視さえしていれば、その後も働き続けることが可能です。
もっとも、退職勧奨に応じない場合、会社から解雇がされるケースもあります。解雇が有効である場合には、労働契約関係は解消されてしまいます。
退職勧奨にしたがって会社を辞めても良いと考える場合には、まず退職の際の条件について尋ねるべきです。
具体的には、どの時期に退職するのか、退職金の支給や増額の有無についてです。退職勧誘に応じた場合には退職合意書が作成することとしている会社が多いので、そこに記載された事項をしっかり確認しましょう。
なお、退職勧奨のやり方が悪質な場合(面談の際に脅迫などを用いた場合、執拗に退職勧奨をした場合等)には、損害賠償請求をすることも考えられます。
今回は、「会社側から自主退職を促された」「遠回しに退職を勧められた」と感じた労働者の方向けに、退職勧奨の内容、またそのものが違法か適法であるか否かについて解説しました。
もしも、労働審判や最終的に裁判となった場合には、証拠の保全・収集がとても大切になってきます。
これらについて1人で判断したり行動したりするのは困難を極めます。
そのため、退職勧奨がされた場合には、法律のプロである弁護士に相談することをお勧めします。