労災が認められない場合とは|労災認定の要件・認定基準・対象外の例などを解説

仕事中または通勤中にケガをした、病気に罹ったと思っても、様々な事情から労災認定が行われないことがあります。

不本意な形で労災認定を受けられない事態を回避するためにも、労災認定の要件や認定基準を踏まえたうえで、十分な資料を準備して労災保険給付の請求を行いましょう。

今回は、労災認定の要件・認定基準、およびこれらを踏まえて労災認定の対象外となる場合の具体例を解説します。

労災が認められるのは「業務災害」と「通勤災害」の2種類

労災が認定されるケガや病気(または障害・死亡)は、「業務災害」と「通勤災害」の2つに分類されます。まずは、業務災害と通勤災害の各認定要件を確認しておきましょう。

業務災害の認定要件

「業務災害」とは、業務上の事由によって発生した、労働者の負傷・疾病・障害・死亡を意味します。

業務災害について労災保険給付が行われるのは、以下の2つの要件を満たす場合です。

①業務遂行性
労働者が使用者の支配下にある状況で、負傷等が発生したことを意味します。

②業務起因性
業務と労働者の負傷等の間に、合理的な原因・結果の関係(相当因果関係)が認められることを意味します。

通勤災害の認定要件

「通勤災害」とは、通勤中に発生した、労働者の負傷・疾病・障害・死亡を意味します。

通勤災害について労災保険給付が行われるのは、以下の4つの要件を満たす場合です。

①以下のいずれかの移動に該当すること
・住居と就業場所の間の往復
・就業場所から他の就業場所への移動
・単身赴任先住居と帰省先住居の間の移動

②移動と業務の間に密接な関連性があること
近接した時期において、具体的な業務が予定されている移動中に発生した負傷等のみ、通勤災害の対象となります。

③合理的な経路・方法による移動であること
特段の事情がない限り、最短経路またはそれに準ずる経路による移動中に発生した負傷等のみ、通勤災害の対象となります。

④移動が業務の性質を有しないこと
移動自体が業務の一環である場合には、業務災害への該当性が問題となるため、通勤災害の対象からは除外されます。

精神障害と脳・心臓疾患については、通達により認定基準が定められている

業務災害の認定において、問題となる疾病(障害・死亡の原因になった場合を含む)が精神障害または脳血管疾患・虚血性心疾患等の場合には、疾病と業務の間の因果関係の有無を判断するのが難しい傾向にあります。これらの疾病は、業務以外の要因によって発生するケースも多いからです。

そのため、精神障害および脳血管疾患・虚血性心疾患等については、業務災害の要件である「業務起因性」の有無を判断するための認定基準が、厚生労働省の通達によって定められています。

心理的負荷による精神障害の認定基準の概要

「心理的負荷による精神障害の認定基準」は、うつ病や急性ストレス反応などの精神障害について、業務災害の要件である業務起因性の有無を判断するための基準です。

参考:心理的負荷による精神障害の認定基準について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj-att/2r9852000001z43h.pdf

心理的負荷による精神障害について、業務災害の認定を受けるには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

①対象となる精神障害を発病していること
②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷および個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと

②の「業務による強い心理的負荷」が認められるかどうかは、きっかけとなった出来事がもたらす心理的負荷の強度を評価して判断します。

仮に「業務による強い心理的負荷」が認められるとしても、業務以外の強いストレス要因が発病前の近い時期に発生している場合には、③の要件を満たさず、精神障害の業務起因性が認められないケースがあるので注意が必要です。

脳血管疾患・虚血性心疾患等の認定基準の概要

「脳血管疾患・虚血性心疾患等の認定基準」は、以下の疾病について、業務災害の要件である業務起因性の有無を判断するための基準です。

①脳血管疾患
・脳内出血(脳出血)
・くも膜下出血
・脳梗塞
・高血圧性脳症

②虚血性心疾患
・心筋梗塞
・狭心症
・心停止
・解離性大動脈瘤

参考:脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11a.pdf

脳血管疾患・虚血性心疾患等について業務災害が認定されるのは、以下のいずれかの出来事・業務によって、明らかな過重負荷を受けた場合です。

①異常な出来事
強度の精神的負荷または身体的負荷を引き起こす、突発的または予測困難な異常事態に遭遇したことや、作業環境が急激に著しく変化したことが「異常な出来事」に当たります。

②短期間の加重業務
発症前おおむね1週間に、日常業務に比較して、特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務に就労したことが「短期間の加重業務」に当たります。

③長期間の加重業務
発症前おおむね1か月~6か月間に、労働者にかかった負荷の程度を考慮して、「長期間の加重業務」の該当性が判断されます。
労働時間に加えて、勤務スケジュールが不規則かどうか、実作業時間と手待ち時間の密度、出張の頻度、作業環境、業務の精神的緊張度合などが考慮されます。

労災認定の対象外となる場合の具体例

上記の労災認定の要件・認定基準を踏まえて、労災認定の対象外となる場合の具体例をいくつか紹介します。

休憩時間中にケガをした場合

休憩時間中に発生したケガは、業務災害の認定を受けることができません。休憩時間中の労働者は使用者の指揮命令下にないため、業務遂行性および業務起因性が認められないからです。

例えば、休憩時間中に外食をして、オフィスへ帰ってくる途中で交通事故に遭った場合には、業務災害が認められません。

ただし、休憩時間中も使用者の指示に従って対応することが義務付けられている場合(手待ち時間)、労働時間として業務遂行性・業務起因性が肯定され、業務災害が認定される可能性があります。

業務以外の要因によってうつ病に罹った場合

うつ病についての業務起因性の判断は、前述のとおり「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づいて行われます。

同認定基準では、心理的負荷が強いと判断される業務以外の要因として、主に以下の例を挙げています。

・離婚、夫婦の別居
・自身の重い病気、ケガ、流産
・配偶者、子ども、親、兄弟の死亡
・配偶者、子どもの重い病気やケガ
・親類の誰かが世間的にまずいことをした
・多額の財産を損失した、または突然大きな支出があった
・天災や火災などに遭った
・犯罪に巻き込まれた

うつ病発症前の近接した時期において、上記いずれかの出来事が発生している場合、うつ病の原因が業務以外にあると判断され、労災認定の対象外となってしまう可能性があるので注意が必要です。

業務上のストレスがそれほど深刻でない場合

精神障害や脳血管疾患・虚血性心疾患等については、各認定基準に従い、業務によって労働者に生じたストレス(負荷)の程度を評価し、業務起因性の有無を判断します。

その際、労働者の負荷の程度がそれほど強くないと判断された場合、業務災害は認定されません。例えば以下に挙げる場合には、業務上の負荷が弱いと判断され、業務災害が認定されない可能性が高いです。

<精神障害の場合>
・会社からミスの責任を問われたが、その後の業務で容易に損害を回復できる軽微なミスであった場合
・新規事業の担当者になったが、それほど重要な事業ではなく、責任も大きいとは言えなかった
・顧客からクレームを受けたものの、特に具体的な対応は必要なく、業務内容や業務量にも大きな変化がなかった
など

<脳血管疾患・虚血性心疾患等の場合>
・残業はしばしば発生していたが、1か月当たり45時間以下の範囲内に収まるものだった
・1か月当たり60~80時間程度の残業が発生していたが、手待ち時間が多く、実際の作業密度はそれほど厳しいものではなかった
など

職場から帰宅する際、遠回りや寄り道をしている最中に交通事故に遭った場合

通勤災害の認定に関しては、「合理的な経路・方法による移動」であったかどうかが重要な判断ポイントになります。

不必要な遠回りや寄り道をしている最中に、交通事故に遭うなどしてケガをしたとしても、通勤災害は認定されない点に注意しましょう。

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監修・執筆
阿部由羅(あべ ゆら) 弁護士
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。一般民事から企業法務まで、各種の法律相談を幅広く取り扱う。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
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