みなし残業の上限時間は月45時間?違法や問題になるケースは?

多くの企業では「みなし残業制」が採用されていると思います。

しかし、巷では「みなし残業は違法ではないか」と言われることがあります。

また、みなし残業は労働者を好き勝手働かせることができると思われている場合もあります。

この記事では、みなし残業について、上限時間はあるのか、月30時間、月40時間、月45時間は違法ではないのか、また違法・問題となるケースと共に解説します。

みなし残業制について

みなし残業とは?

みなし残業制とは、「みなし労働時間制」と「固定残業代制」を組み合わせた制度です。

  • みなし労働時間制・・・・あらかじめ労働者の労働時間を会社が決定しておく制度
  • 固定残業代制・・・みなし残業時間を定めておき、その残業時間に対応する給料をあらかじめ支給する制度

すなわち、みなし残業制は、あらかじめ「労働者が一定時間残業をしたことを前提として、残業代を支払う」制度と言えます。

みなし残業のメリット|労働者側

みなし残業制を採用すれば、労働者が残業をしたか否かや、残業時間をいくらしたかに関わらず、みなし残業時間分だけ残業したものとみなされます。

例えば「所定労働時間を8時間、みなし残業時間を1時間」と定めた場合、たとえその日8時間労働して帰宅した場合でも、みなし残業時間1時間分の給料が支給されます。

このように、労働者にとっては、少ない労働時間で高い給料をもらえるメリットがあります。

みなし残業のメリット|会社側

他方で、会社にとっても多くのメリットがあります。

まず、残業代計算の手間が省けます。みなし残業制を採用していない場合、各労働者の労働時間を個別に計算して残業代を月々支給しなければなりません。しかしみなし残業制を採用していれば、この手間が不要となります。

また、残業代の変動が抑えられ、人件費の予測が立てやすくなることもメリットの1つです。

ただし、後述のように、みなし残業時間を超えて労働者が働いた場合には、追加で残業代を支払う必要があります。

みなし労働時間制の種類

先述のように、みなし残業制はみなし労働時間制と固定残業代制が組み合わさった制度です。このうち、みなし労働時間制については法律の定めがあります。

①事業場外労働制

労働者が会社以外で勤務する場合(営業職など)には、労働時間の算定を正確に行うのは困難です。そこで、事業場外労働者にはみなし労働時間制を適用することができます(労基法38条の2)。

②専門型裁量労働制

専門的技術・知識を用いて労働をする者に関しては、その者の裁量に任せて業務を行わせることが合理的です。そこで、「業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務」について、みなし労働時間制を採用できます(38条の3)。対象となる業務は、研究職、新聞社、デザイナー、公認会計士、弁護士等です。

③企画業務型裁量労働制

上で述べた専門型裁量労働制と同様の趣旨から、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」についても、みなし労働時間制の採用が認められれています(労基法38条の4)。

④その他

上で述べたことに該当しない場合であっても、みなし労働時間制を採用することは可能です。

そのため、多くの会社でみなし労働時間制と固定残業代制を採用しています。

例えば、所定労働時間を8時間、みなし残業時間を1時間として、あらかじめ1時間分の固定残業代を支払うことと就業規則で定めていることがあります。

このように、①~③に該当しない場合でも、労働基準法に適合するみなし労働時間制は適法です。

みなし残業の上限時間は月30時間?40時間?45時間?

みなし残業時間制の上限時間については定めはありません。

そのため、月30時間であっても40時間であっても45時間であっても特に問題はないことになります。

しかし、労働基準法は、残業時間の限度を原則として「月45時間」としています。

そのため、みなし残業時間についても月45時間に抑えるのが一般的です。

みなし残業が違法・問題となるケース

①みなし残業制は適法

先述のように、みなし残業制は、労働者にとってデメリットが生じる場合もあります。

しかし、みなし残業制は労働基準法に適合するものであれば基本的には「適法」です。即違法とはなりません。

ただ、制度の定め方や実態によっては違法となるケースがあります。以下、問題となるケースについて説明します。

②みなし残業時間を超える労働があっても残業代を支払っていない

一番問題となるのがこのケースです。

会社は、みなし労働時間制を定めている場合であっても、そのみなし労働時間を超えて働いた労働者に対しては、残業代を追加で支払わなければならないことが多いです。

例えば、月30時間のみなし残業時間を定めた会社で、労働者が40時間働いた場合、固定残業代に追加して10時間分の給料を支払わなければならない可能性が高いです。

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③36協定が締結されていない

労働者の法定労働時間は一日8時間、週40時間が原則*です(休憩時間は除きます)

*労基法32条

この労働時間を延長させるためには、使用者と労働者で36協定を締結する必要があります。

これは、みなし残業制を採用している場合も同様です。36協定を締結していないのに労働者を法定労働時間を超えて労働させた場合、36協定で定めた時間を超えて実際に労働させた場合、使用者は処罰される可能性があります。

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④基本給と残業代の区別がない

みなし残業制を採用した場合、基本給と残業代を区分して支給しなければなりません。

この区別がない場合、問題になります。

そのため、残業代を含める趣旨で基本給を高額にしていても、基本給と残業代を区分していなければ、会社は労働者に追加で残業代を支払う必要が出てきます。

まとめ

このように、みなし残業制は会社・労働者にとってメリットがある制度です。上限の定めは特になく月30時間、40時間、45時間で問題がありません。

しかし、制度の定め方や運営の仕方によっては違法なものとなってしまいます。

本来支払われるべき残業代が支払われていない可能性もあります。

適切な残業代が支払われていないと疑念を抱いた方は、弁護士に相談することもご検討ください。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
本記事は労働問題弁護士カフェを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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