パワハラの定義とは|どこから?種類・判断基準をわかりやすく解説!
「パワハラ」という言葉を聞いたことがある方は、最近では非常に多くなってきているのではないでしょうか。 パワハラは「パ…[続きを読む]
- 部下に対し注意や指導をしただけなのに、部下から「パワハラだ!」と訴えられた!
- 旦那が会社で部下から身に覚えがないパワハラを指摘されてる!冤罪じゃないの?
- パワハラはでっち上げ・言いがかりだから名誉毀損で逆に仕返ししたい
業務上必要な指導や適切な注意であったにもかかわらず、それを受けた側が誤解をしてパワハラだとして訴えてくることがあります
また、上司に対して不満を持つ部下がパワハラだとでっち上げや言いがかりをつけてくることもあるかもしれません。
パワハラを疑われる立場になったときには、対応を誤ると被害を拡大させるおそれがありますので適切な対応をとることが重要です。
今回は、部下からパワハラで訴えられたときの対応について解説します。
目次
まずは、パワハラについての基本的な事項について説明します。
厚生労働省の定義を前提とすると、パワハラに該当するかどうかは、以下の要素を踏まえて判断することになります(厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」)。
①職務上の地位や人間関係などの職場の優位性を利用したかどうか
②業務の適正な範囲を超えていたかどうか
③精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為かどうか
また、パワハラの典型的な行為類型としては、以下の6つがあります。
①身体的侵害
②精神的侵害
③人間関係からの切り離し
④過大な要求
⑤過小な要求
⑥個の侵害
下記ページが詳しいので、後ほど併せてご参照ください。
もし部下からパワハラだと指摘されたときには、どのように対応すればよいのでしょうか。以下では、パワハラを指摘された個人としての対応と会社としての対応に分けて説明します。
上司としては、パワハラと指摘されたことを会社に報告することは、将来の人事考課に影響があるとして、会社に報告せずに終わらせたいと考えることもあるかもしれません。
しかし、部下は、上司の言動がパワハラにあたると言っているのですから、そのような上司と二人きりで「話をすること自体がパワハラ」だと指摘されるかもしれません。
つまり、上司が部下からパワハラだと指摘されたときは、上司と部下が「一対一で話し合う」のは避けた方がよいでしょう。
事実でないことも認めて謝罪したことが「不利な証拠」となることもあります。
したがって、部下からパワハラだと指摘されたときは、自分だけで解決しようとするのではなく「すぐに会社に報告」をして、今後の対応の方針を協議するようにしてください。
会社がパワハラの報告を受けるのは、下記2つのケースがあります。
- パワハラを指摘する部下から直接会社に報告があった場合
- パワハラを疑われる上司から報告を受けた場合
パワハラの報告を受けた場合には、まず部下・上司・当事者以外の第三者から、パワハラの「事実関係の確認」「聞き取り」を行います。
事実関係の聴取の結果は、将来、パワハラを指摘する部下からの不服申し立てがされた場合に重要な資料になることから、事実関係の調査は、複数名で対応し、聴取日時、場所、出席者、聴取内容について詳細に記録します。
調査の結果、パワハラの事実を確認できないと判断したときは、その理由を部下に丁寧に説明し、会社として適切に対応したことを理解してもらいます。また、パワハラがあったとは判断できないものの、そのまま放置したのでは上司と部下の関係が悪化すると思われるときには、両者の関係改善を図るために努力する必要もあります。
いわれのないパワハラで訴えられたときには、感情的にならずに適切に反論することが重要です。感情的になって怒鳴ってしまったのでは、それについてもパワハラと言われかねません。いわれのないパワハラで訴えられたときの反論のポイントとしては、以下のとおりです。
まずは、部下がどのような事実をもってパワハラであると主張しているのかを丁寧に確認することが必要です。
このときに確認すべきことは、主観的な評価ではなくて「客観的な事実」です。
すなわち、「怒鳴られた」「嫌がらせを受けた」というのは、その人が感じた主観的な評価であって客観的な事実ではありません。怒鳴られたというのであれば「いつ、どこで、どのような経緯で、何を言われたのか」を確認します。
もしも、パワハラを指摘する部下の主張する事実が異なっているときは、事実と異なることを説明します。
部下の主張が事実であったしても、それが直ちにパワハラに当たるとは限りません。
なぜなら、上司から叱責を受けたとしても、それが正当な理由に基づくものであれば、正当な指導であったと反論することが可能だからです。
業務上の指導や監督が違法性を帯びるかどうかは、当該行為の「目的」「手段」「態様」や「双方の職務上における力関係」などの諸事情を総合的に考慮して判断されます。
「部下にも問題がある場合」「業務の性質上、必要性や緊急性がある場合」には、厳しい指導が許容される場合もあります。
ただし、指導・監督を行う際は、過度に人格を否定したり侮辱的な表現を用いないことが重要です。
また、指導・監督をする必要性が乏しいにもかかわらず、執拗に指導を繰り返したり、他の従業員の面前で指導をしたりしないよう注意する必要があります。
パワハラを指摘されたときに、パワハラの事実はないと反論するためには、証拠の有無が重要になります。
しかし、突然部下からパワハラだと指摘されても、部下を注意・指導したときのことを細かく記録していないため、パワハラをしていないことを証明することが難しいこともあります。
パワハラの事実があったということは、まずは、労働者側で証明する必要があります。すなわち、労働者側でパワハラがあったことを証拠により証明することができなければ、上司や会社側でパワハラがなかったことを証明できなかったとしても裁判で負けることはありません。
そのため、部下からパワハラの指摘を受けた場合には、どのような証拠でパワハラの事実を証明しているのかを確認するとよいでしょう。
パワハラの証拠となるものとしては、主に以下のものがあります。
①直接の会話、電話での会話などの録音
②パワハラを行った者が作成した文書やパワハラを行った者とのメール・SNS
③暴行の場合には防犯カメラの映像
④暴行で傷害を負った場合やうつ病などを発症した場合には診断書
⑤パワハラを見聞きしていた人の証言
⑥社内の相談窓口や警察などに相談に行った際の記録
⑦自身が作成した日記、メモなど
パワハラの立証責任が労働者側にあるといっても、上司・会社側もパワハラがでっち上げ・言いがかりだということを反論する必要がありますし、反論するためには証拠も必要になります。
その際には、以下のポイントを踏まえて証拠収集をするとよいでしょう。
たとえば、部下がパワハラがあったと主張する日には、上司は主張で職場にはいなかったことを勤務表などから証明する方法が考えられます。
パワハラを指摘された上司とパワハラを指摘した部下の言い分に食い違いがあるときは、職場の従業員からも事実調査をすることで、どちらの主張が正しいのかがわかります。
部下からのパワハラの指摘が嘘であった場合、部下を名誉毀損で逆に訴えることは可能でしょうか。
実際にパワハラ行為がなかったにもかかわらず、会社に対して、パワハラの報告がされたような場合、そのような虚偽の報告は、加害者とされた「上司の名誉権を侵害」するものですから、虚偽の報告をした部下は、不法行為責任を負います。
したがって、加害者とされた上司は、部下に対して損害賠償請求をすることが可能です。
公然と事実を指摘して、相手の名誉をおとしめた場合には名誉毀損罪(刑法230条)が成立します。
また、事実適示以外の方法で、公然と相手を侮辱した場合には侮辱罪(刑法231条)が成立します。
名誉毀損罪および侮辱罪は、親告罪(刑法232条)とされていますので、刑事処罰を求めるのであれば告訴権者による告訴が必要になります。
そのため、上司は、警察や検察などの捜査機関に対し、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める告訴状を提出する必要があります。
今回は、部下から身に覚えのないパワハラで訴えられたときの対応などについて解説しました。
ご自身やまた旦那さんが、身に覚えのないパワハラを指摘されたときには、仕返ししようとして、対応を誤ると冤罪であるにもかかわらず、不利な立場に追い込まれてしまう可能性があります。
身に覚えのないパワハラに対しては、会社と相談しつつ、毅然とした態度で対応することが重要です。対応に困ったときには、専門家である弁護士に相談をするとよいでしょう。