パワハラの定義とは|どこから?種類・判断基準をわかりやすく解説!
「パワハラ」という言葉を聞いたことがある方は、最近では非常に多くなってきているのではないでしょうか。 パワハラは「パ…[続きを読む]
望まない異動・配置転換は違法ではないのでしょうか?パワハラや退職勧奨にあたるのではないかと考える方も多いでしょう。
企業に勤めていると、不当な人事異動 ・急な配置転換を命じられることがあります。
労働者の中には、慣れ親しんだ場所を離れることに強い抵抗を覚える方がいると思います。会社の嫌がらせではないかと勘ぐってしまうケースもあるでしょう。
労働者が望まない異動・急な配置転換を命じられた場合、労働者はこれを拒むことはできるのでしょうか?また、「異動させるぞ」などとほのめかしたり、ちらつかせりすることは、パワハラや退職勧奨にあたらないのでしょうか?
目次
異動・配置転換(配転)*とは、企業内での役職・職務内容を変更することをいいます。また、職務内容が変更されるだけではなく、勤務地まで変更されることもあります。
勤務地の変更を伴う場合は転勤ともいわれます。
*異動と配置転換は異なる意味で使われることもありますが、ここでは配置転換を指すものとして扱います。
類似する措置についても念のため、抑えておきましょう。
「出向」とは、出向元との労働契約を存続させたまま、出向先に赴き労働することをいいます。
配置転換はあくまでも企業内部での措置です。他方で出向は、企業から出て他の企業で働くこととなります。この場合、一定の期間が経過してから出向元に戻ることが予定されている場合が多いです。
「転籍」とは、企業の命令により、企業との労働契約を解消して別の企業と労働契約を締結することをいいます。
配置転換や出向は、現在勤めている企業との労働契約を存続させたまま行う措置ですが、転籍は現在勤めている企業との労働契約を解消させるものです。
転籍は、退職と新たな就職をセットにしたものとイメージすると良いでしょう。
異動・配置転換は、勤務時間の変更の他、勤務地が変われば移動時間や住居の変更が必要になるケースもあり、労働者の日常生活などに影響を与える措置なので、企業はむやみやたらに異動・配置転換ができるわけではありません。
異動・配置転換は以下の要件を充足した場合に適法なものとなります。
まず、就業規則に定めがあることが必要です。実際は、多くの企業で、異動・配置転換を行うことができる等の定めが就業規則に存在します。
労働契約を締結する際、「勤務地を東京に限ること」あるいは「職種はドライバーに限ること」などを契約の内容に織り込むことがあります。
この場合、たとえ就業規則に異動・配置転換の定めがあっても、この合意に反する措置は違法となりますので、異動・配置転換は認められません。
上記に要件を充足した場合でも、異動・配置転換は以下のような事情がある場合、権利の濫用にあたるとして違法になります(東亜ペイント事件。最判昭和61年7月14日)。
「業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき」
不当な人事異動・会社の急な配置転換は「権利の濫用」じゃないのかと考える方もいらっしゃるでしょう。
この場合、ご自身のケースが権利の濫用にあたるかはケースバイケースです。
例えば下記の事情があると権利の濫用と判断されやすいです。
ただ上記のようなケース以外も、原因不明の不当な人事異動・急な配置転換が行われることは多々あります。
人によっては感じ方が異なるので、どうしても納得できない場合は、一度「労働問題に強い弁護士」に相談しても良いでしょう。
パワハラとは、以下の要件を満たす言動をいいます。
上記の①にあるように「優越的な関係を背景とした言動」がパワハラにあたるケースもあるので、異動をほのめかす・ちらつかせるのもパワハラではないだろうかと考える方もいらっしゃることでしょう。
しかし、上司が一度、異動・配置転換をちらつかせたり、ほのめかしたり、また実際にこれを命じただけでは、労働者の就業環境が害される(③)とまではいえないため、パワハラにはなるとは言えないでしょう。
しかし、異動・配置転換を拒絶する労働者に対し、「過度に」命令に応じるよう働きかけるなどした場合には、パワハラにあたる可能性はあります。
退職勧奨とは、企業が労働者に対して「自主退職をするよう説得」することをいいます。企業が労働者を解雇する際には、労働基準法上の厳しい制約がかかります。
他方で、労働者自ら進んで行う退職はそのような制約はないので「企業は退職勧奨により労働者の人員整理」を行うことがあります。
以上から分かるように、異動・配置転換と退職勧奨は次元が異なるものです。
もっとも、退職勧奨をしたが労働者が自主退職をしない場合、「異動させるぞ」と異動・配置転換をほのめかしたり、実際にこれを命じることがあります。
このような場合、企業の一連の行為は違法と判断される可能性があります。
実際に行われる不当な人事異動 ・急な配置転換の多くは、就業規則に基づくもので、かつ権利の濫用にあたらないと思われるため、違法になりません。
もっとも、先述のように、労働者への報復等不当の目的を持ってこれが行われた場合、あるいは労働者への不利益が大きくなるような特別の事情がある場合などには、異動・配置転換は違法となる可能性があります。
この場合、労働者側は異動・配置転換の効力を争うことができます。また、異動・配置転換に応じないからといって解雇された場合にも、異動・配置転換と共に解雇の有効性についても争うことができます。
場合によっては、損害賠償請求も認められる可能性があります。不当な人事異動 ・急な配置転換が不当と感じる方は、弁護士に相談してみましょう。
法律のプロである弁護士ならば、企業の一連の行為の適法性について、労働者に代わり争うことができます。