36協定についてわかりやすく解説|残業時間の上限は月45時間以上?
労働問題や残業に関係する問題でよく出てくるものが「36協定」です。一度は耳にしたことがあると思います。 この記事では…[続きを読む]
会社は、就業規則において休日を定めています。しかし会社から、休日出勤をお願いされることがあります。
休日に予定が入っていたり、また、休日はゆっくりしたいのでこれを断りたいと思ったりする方がほとんどでしょう。
会社が休日出勤を要請してきた場合、これを拒否できるのでしょうか?また、休日出勤を断ったにもかかわらず、会社がこれを強制してきたら、パワハラ等にあたるのでしょうか?
目次
休日には「法定休日」と「所定休日」があります。
例えば、土日が休日の会社は、土日のうち一方が法定休日、もう一方が所定休日となります。一方で、週に1日だけが休日となっている会社では、その日が法定休日となります。
労働基準法は、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとしています(労働基準法35条1項)。
法定休日・所定休日は、どちらも休日であることに変わりありません。しかし両者は、休日出勤が可能となる要件や、その場合の賃金が異なっています。
以降の休日出勤(休日労働)とは、法定休日に労働させることをいいます。
法定休日に出勤を要請されても、拒否できるのが原則です。
しかし、下記の場合には、休日に労働する義務が発生します。そのため、勝手に休日出勤を決められたとしても、これを拒否することはできません。
36協定とは、法定労働時間を超えて、また法定休日に労働させることができるようにするために、使用者と労働者の間で定める協定です(労働基準法36条1項)。
使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合と、あるいは、労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者と、書面による協定を結び、これを行政官庁に届け出る必要があります。
また、法定休日に労働者を働かせた場合には、通常使用者は罰せられてしまいますが(6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)、36協定を届け出ることは、この罰則が科されなくなることを意味するのです。
一方、労働者との関係では、労働者に労働義務を負わせる根拠が必要です。
そのためには「就業規則」に休日出勤の定めが置かれている必要があります。
就業規則に定めがあれば、労働者との個別の同意が無くても、労働者に休日出勤を命じることができます。
就業規則に休日出勤の定めがあっても、実際に記載された要件を満たさなければ、労働者に休日出勤をする義務は発生しません。
例えば「業務の内容によりやむをえない場合には、休日出勤させることができる」とされていても、労働者側にやむを得ない事情があれば、休日出勤を拒否できる可能性があります。
やむを得ない事情として①冠婚葬祭②親族の介護③通院などが挙げられます。
以上の話はあくまで「法定休日」に出勤を命じられた場合に労働義務があるかについてのものです。
それでは「所定休日」に出勤を命じられた場合、つまり週休2日制の会社で、一方の休日に出勤を命じられた場合、労働者に出勤義務はあるのでしょうか?
この場合も、②③の要件を充足すれば、出勤義務があると考えられています。
もっとも、週の労働時間が40時間を超える場合などには、①の36協定の締結と届出が必要になります。
休日出勤をする義務があるのに、これを無視・拒否するケースがあるかと思います。
この場合には、会社から「懲戒処分」を受ける可能性があります。
もっとも懲戒処分は、これをするのに客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものでなければなりません。
したがって、一度休日出勤を断っただけで厳しい処分(解雇等)がされた場合は、不当な懲戒処分として違法と判断される可能性があります。
また、休日出勤をする義務がないのにこれを命じられ、断った労働者に対し懲戒処分がされた場合、この懲戒処分は不当なものです。
休日出勤を拒否して不当な処分を受けた場合には、弁護士に相談することもご検討ください。
パワハラとは、①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもので③その雇用する労働者の就業環境が害されるものをいいます*。
*(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第20条の2第1項)。
上記の要件を鑑みると、使用者に休日出勤を命じられただけでは、パワハラになることはありません。
しかし、1で述べた要件を満たさないのに無理矢理休日出勤させようとした場合には、パワハラになる可能性があります。
また、要件は充足するもこれを拒絶する労働者に、相当な範囲を超えて休日出勤をするよう迫った場合にも、パワハラになる可能性があります。