自分だけ仕事量が多すぎる!|仕事の押しつけはパワハラじゃないの?

パワハラ・いじめ

仕事をしている中で、「自分だけに仕事量が多すぎる。一人に仕事が集中する」、「明らかに終わりの見えない量の仕事をふられた」、「経験したことない仕事をいきなりふられた」など過大な要求をされたことがある方もいらっしゃると思います。

このように仕事で一人に負担が偏ったり、集中する過大な要求は、パワハラにあたるのでしょうか?

この記事では、過大な要求型のパワハラの内容、事例などについて分かりやすく解説していきます。

パワハラとは?

まず、パワハラについて簡単に解説します。

厚生労働省では以上のように定義されており、以下の3つの要素から成り立っていることがわかります。これらの「全ての要素」を充たした場合にパワハラになります。

①優越的な関係を背景とした言動
②業務上必要かつ相当な範囲を超えている
③就業環境が害される

過大な要求型のパワハラってどんな場合?

厚生労働省では、「過大な要求」とは、『業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害』のことを言うとしています。

以下、具体的にどのような場合が「過大な要求」とされるのかを解説していきます。

明らかに達成不可能な営業ノルマを提示された場合

営業職の方は、毎月ノルマを課せられていることも多いかと思います。

しかし、単にノルマがあるだけでは、過大な要求とまではいえません。

これまでのノルマを著しく上回り、その会社の規模からして「達成不可能」と考えられるようなノルマを設定し、強制することは過大な要求にあたり、パワハラとなります。

終わりの見えない量の無理な仕事を押し付けられた場合

明らかに必要のない雑務を「今日までに終わらしてほしい」などと言って仕事を押し付ける行為は、過大な要求にあたり、パワハラとなります。

例えば、いつ破棄してもいいような不必要となった資料の山を、今日中にシュレッダーで裁断する仕事をふるなどがこれにあたります。

経験したことのない仕事をふられた場合

これまで経験したことのない仕事をふられただけでは、過大な要求とまではいえません。

なぜなら、この場合には、上司は部下にチャレンジをしてほしい、これまでに積み重ねた経験を用いればできるのではないかとの期待の意味が込められている場合もあるでしょう。

しかし、これまでに一度も経験したことがなく、これまでの積み重ねた経験を用いても不可能な仕事をふられた場合で、どう考えてもできないような仕事をふり、それが達成できなかったことに対し厳しく叱責することは過大な要求といえ、パワハラになります。

仕事量が自分だけ多すぎる場合・同じパートなのに仕事量が違う

単に会社自体が忙しい場合や業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任すことはパワハラにはなりません。

これは人手不足が起因する別の問題ともいえるでしょう。

しかし、同じような技能や立場であるにも関わらず、特定の人にのみ業務が著しく集中している場合は、パワハラに当たる場合があります。

例えば、同じパートなのに自分だけ仕事量が著しく多い場合などです。

もっとも、特定の人しかできないような特殊な技能を持っている場合には、パワハラにあたるとはいえないでしょう。

例えば、その職場内で英語ができる人がその1人しかいない場合で、その人に英語に関係する仕事が集中した結果、その人だけが著しく忙しくなってしまった場合などです。

仕事を丸投げする場合

仕事の裁量を全て任されている場合もあるでしょう。

しかし、それが単に丸投げされており、それが達成できなかった場合に厳しく叱責するなどした場合には、パワハラにあたる可能性があります。

過大な要求によりパワハラが認められた裁判事例

以下、実際に争われたケースについて解説していきます。

パワハラと認められた判例

鹿児島地裁平成26年3月12日判決

<事案の概要>
精神疾患を有する市立中学の教員に対し、校長、教育委員会等が、この教員の業務量を増加させ、また特別研修へ強制的に参加させるなどのパワーハラスメントを行ったことが原因で精神疾患が増悪し、当該教職員が自殺したとして、県及び市に対し、遺族が損害賠償を求めた事案。

<判決>
校長らの行為は、精神疾患を有する者にとって大きな心理的負荷を与えるものであったと認定し、損害賠償の半額の請求を認めました。

この判決では、この結論を導くために業務量を増加させた行為が心理的負荷を大きくさせたと認定しました。

元教員が精神疾患による病気休暇明け直後であって、校長らはその精神疾患について知り得たにも関わらず、従来の音楽科及び家庭科に加え、教員免許外科目である国語科を担当させ、その他の業務の軽減もなかったことなどから、業務量の増加による元教員の心理的負荷は過重であったと認定されました。

東京地裁平成14年7月9日判決

<事案の概要>
Y社は個品割賦事業部と旅行事業部からなる会社であったところ、旅行事業廃業に伴い、旅行事業部所属のXを整理解雇しました。Xはこの整理解雇を無効として争うとともに、Xの担当業務が多忙を極めていたが、他の労働者に支援させなかったといった一連の「いじめ」は、Y社代表取締役社長及び代表取締役専務の指示に基づくものであるとして、専務及び社長個人とY社に慰謝料及び休業損害の支払いを求めた事案。

<判決>
一連のいじめ行為は労働者を退職させるための嫌がらせであり、また、代表取締役の指示ないし了解の下に行われたから、代表取締役個人及び会社が連帯して損害賠償責任を負うとしました。

この事例では、他の部員はあまり残業がない一方でXは担当業務に1人で従事し、またこの業務は勤務が早朝から深夜に及び休憩もとれず、土日出勤もあったことから専務と社長に人員補充を求めたものの、Xが同業務に従事した約半年間特段の措置はとられなかったという点を嫌がらせと捉えて、パワハラと認定しました。

パワハラと認められなかった判例

・東京地裁平成28年6月10日判決

<事案の概要>
警視庁で勤務していた亡Xの相続人である原告らが、上司であった被告が亡Xに対してパワーハラスメントを行い、被告都が安全配慮義務を怠ったため、亡Xはうつ病を発症して自殺したと主張して、被告Yに対しては不法行為に基づき、被告都に対しては国家賠償法1条1項及び安全配慮義務違反の債務不履行に基づき、連帯での損害賠償を求めた事案。

<判決>
被告が亡Xに対して原告らの主張するようなパワハラを行ったと認めることはできないと判断し、その業務が特段過重であったともいえないことから、請求を棄却しました。

この判決では、原告らは、被告が人員を補充せずに亡Xに業務を押し付けたと主張したものの、亡Xの業務は、係員が作成した書類の決裁等をするものであり、作成すべき文書は基本的に過去に作成された文書を参考にすることができたことから、これらの業務は比較的容易なものであったと認定され、またその業務量は総じて少なかったと判断されました。

このように過大な要求型のパワハラでは、業務の種類や態様などを総合的に判断し、パワハラにあたるかどうかを判断しています。

過大な要求をされた場合は、拒否してもいいの?

業務命令として過大な要求がされることが多いでしょう。

しかし、ただ単にこの業務命令を拒否すると「解雇、懲戒処分の理由」とされることも少なくありません。

またそれ以外にも、人事評価や給与にも影響し、不利益を受けるおそれもあるかもしれません。

業務命令を拒否することにはこのようなリスクが考えられます。

そのため、与えられた仕事が正当なものか、過大な要求にあたるような雑務の押しつけ等のパワハラにあたるかという証拠を残した上で、本当に拒否していいかどうかを慎重に考えるべきでしょう。

普段の業務でもそうですが、指示があったかなかったか、どのような内容の指示を受けたかなどで業務上のトラブルが生じることもあるかと思います。

そのため普段から、具体的にどのような指示を受けたのか、しっかりと記録しておくできです。

仮に裁判上で争うための証拠としては、メールや録音など具体的な言葉が残るものが望ましいです。業務命令の際の言葉をメモしておくのも有効です。もっとも、メールや録音に比べると信頼性は落ちてしまいますので、注意しましょう。

判断に困った場合には、弁護士や社内外の窓口に相談してみるのも良いでしょう。

過大な要求をされた場合はどうすればいいの?

①話し合い

パワハラを受けた場合には、直接パワハラをしている方と話し合うのも一つの手段です。

仕事が多すぎる場合には、人員の補充が検討されることもあり、またノルマが過大過ぎた場合には、その見直しが行われる可能性があります。

もっともこの話し合いの際には「録音する」などし、後でトラブルにならないようにすることが重要です。

②社内の相談窓口に相談する

直接上司と話し合うことが難しい場合、又は話し合いをしても聞く耳を持たないことが事前に明らかな場合には、話し合いでの解決は難しいでしょう。

その場合で、社内に相談窓口を設けている会社であれば、その窓口で相談してみるのも一つの方法です。

人員の補充やノルマの見直し等の改善が行われる可能性があります。

なお、またこれまでは法令上の義務付けがされていなかった相談窓口の設置については、2019年改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法とも呼ばれています)により、大企業では令和2年6月から義務付けられることになりました。

加えて、中小企業では、令和4年4月から設置が義務付けられることとなります。

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労働監督署など社外の機関に相談

社内での相談が功を奏さなかった場合や、未だ相談窓口が設置されていない場合には、社外の労働基準監督署や労働局といった窓口に相談することも取り得る手段の一つです。

これらから会社に指導を出してもらえることがあり、これにより何らかの改善がされる可能背があります。

労働基準監督署に相談・通報する際の注意点は?
労働者が使用者との間で仕事上のトラブルを抱えていたり、違法な職場環境に耐えかねていたりする場合には、労働基準監督署に相談・通報することを検討しましょう。 しかし、初めて労働基準監督署に相談・通報を行う場合は、わからないことが多すぎて戸...

弁護士に相談

会社との話し合いで解決できない場合には、法律の専門家である弁護士に相談をしましょう。その上で、何らかの改善やパワハラを行った者や会社に対して、慰謝料の請求をすることになります。

もっとも、労働審判や裁判を行う場合には、退職を前提としていることがほとんどです。労働審判や裁判を行えば、会社との関係は悪化してしまう可能性がありますので、通常通り勤務することはなかなか難しいことが想像できます。

そのため、労働審判や裁判を行う場合には、今後の自分の居場所などもしっかりと考えた上で行うようにしましょう。

まとめ

単に仕事が多いだけでは、パワハラと言えるかは難しいでしょう。

しかし、自分だけに仕事が押し付けられている、必要性がないのに明らかに終わりの見えない量の仕事をふられた、達成不可能であることが明白であるのに経験したことない仕事をいきなりふられたといった場合にはパワハラにあたり得ることがあります。

このような過大な要求型のパワハラ受けた場合には、話し合いや社内外の相談窓口での相談を検討してみてはいかがでしょうか。

また、上司や会社に対し、慰謝料の請求などを視野に入れている場合には、弁護士に相談をして裁判を行うことが考えられます。

がんばって働かなければならない時期もあるかと思います。しかし、働きすぎて無理をし、心身ともに疲労してしまうことがあります。最悪な状況に陥る前に、一人で抱え込まずに誰かに相談するなどして、早めに対処しましょう。

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