リモートハラスメントとは|その事例やパワハラ・セクハラの対処法
在宅勤務やテレワークの導入により、これまでとは異なる働き方に不安を感じている方も多いそうです。 特に最近では、オンラ…[続きを読む]
「リモートワークだと常時監視されているからつらい、うざい、サボりづらい」
「テレワークの常時監視はプライバシーの侵害にならないの?違法じゃないの?」
テレワークを実施中の会社で勤務している方の中には、こんな悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。
実は、テレワーク中の監視は「プライバシーの侵害」となる可能性があるため、会社が監視を行うには細心の注意が必要になります。
そこで、今回は、テレワークでなぜ監視が必要なのか、監視は違法ではないのか、テレワークで常時監視することはプライバシーの侵害にあたらないのかについて説明します。
なお、監視以外のハラスメントについては、下記記事も詳しいので併せてご参照ください。
昨今はコロナウイルスの感染拡大をきっかけにテレワーク・リモートワークを採用する会社が増えてきています。
そして、テレワークの普及に伴って会社が従業員を常時監視するというシステムを導入しているところもあるようです。
常時監視の具体例としては、カメラを常時オンにしておくことを求められ、上司がそれをチェックしていたり、パソコンに専用ソフトをインストールすることで、パソコン使用状況を上司がチェックできるようにしたりする方法などがあります。
しかし、そもそも労働者としては、監視されずに仕事ができるならそれに越したことはありません。では、なぜ監視が必要なのでしょうか。会社が監視をする理由としては、次の3つが挙げられます。
会社に出社して仕事をする場合、上司は部下が離席しているとパッとみたら分かりますし、いつ誰がパソコンの画面を見るかわからないため、私用でネットサーフィンをするのも難しいですよね。
しかし、テレワークの場合、上司は部下が離席したり私用のネットサーフィンをしたりしていても確認することができません。部下が真面目に仕事をしていないと仕事が進まず、業務に支障を及ぼしてしまうことも考えられます。
そのため、上司としては、仕事の進捗状況を管理するために、常時監視をしておきたいと考えるようになります。
同じ空間で仕事をしていると、ちょっとしたことでもすぐにコミュニケーションを取ることができるので、何か分からないことがあってもすぐに確認することができます。
しかし、テレワークの場合、コミュニケーションを取るためにはわざわざツールを使って連絡を取る必要があるので、連絡のやり取りのハードルが高くなります。
そうすると、「これくらいであれば連絡をしなくてもいいかな」と考えてスムーズなコミュニケーションが取れなくなる可能性もあります。
そこで、お互いに可視化して同じ空間にいるのと似た環境を作ることで、コミュニケーションを取りやすくするという狙いがあります。
テレワークであっても、会社には労働時間の管理を行うことが求められます。
会社としては、従業員の労働時間を把握して、過重労働になっていないか、残業時間が正確に記録されているかということをチェックする必要があります。
テレワークの場合には、従業員がどれだけ働いているか把握することが難しいため、労働時間の管理をするという観点から従業員を監視することも必要になります。
上記のように、テレワークは通常の勤務形態とは異なるため、会社にとっては従業員を監視する必要性もありますが、従業員にとっては以下のようなデメリットもあります。
従業員としては、常時監視されることにストレスを感じて業務効率が下がる可能性が考えられます。
通常会社に出社して仕事をしているときは上司や同僚と同じ空間にいるとはいえ、常時カメラに映ったり、常時自分のパソコンの画面が上司にわかってしまったりする状況ではありません。
しかし、テレワークで常時カメラをオンにしておくことを求められたり、自分のパソコンの画面が上司に監視されたりすると、自由に仕事をすることができず、結果として業務効率が悪化してしまうこともあり得ます。
常時監視をされるということに過度のストレスを感じてしまい、それがうつ病などの精神障害の原因となってしまう可能性もあります。
もし会社の監視が度を越しているという場合には、我慢せずに弁護士などに相談されることをおすすめします。
テレワークを監視することは、場合によってはプライバシー侵害となる可能性があります。
そもそもプライバシー権とは、正当な理由なく自分の情報を取得、収集されないという自分の情報を自分自身でコントロールする権利です。
会社がテレワーク中の従業員を監視する方法としては、メールやウェブアクセスを監視したり、ウェブカメラで自分の姿を撮影させて監視したりする方法があります。
つまり、メールやウェブアクセスの内容、自分の容貌などはプライバシーとして保護される情報ですので、これらの情報を会社が勝手に取得したり収集したりすることはプライバシー侵害となる可能性があります。
そして、これらの監視がプライバシーの侵害になるかどうかは、メールの私的利用の監視がプライバシー侵害にあたるかどうかについて判断した裁判例(東京地裁判決平成13年12月3日)が参考になります。
この裁判例では、メールの私的利用の監視がプライバシー侵害にあたるかどうかについて「監視をする者の責任や立場、業務上の必要性や監視の目的、監視の方法、監視の根拠、従業員の不利益などを考慮して、社会通念上相当な範囲の監視といえるかどうかによって判断するべき」であるとされています。
そこで、以下ではそれぞれの要素ごとに詳しくみていきます。
職務上従業員を監視するような責任ある立場にない者が監視した場合や、責任ある立場にある者であっても、監視する職務上の合理的必要性が全くないのに個人的な好奇心から監視した場合などには、プライバシー侵害となる可能性があります。
会社は、従業員に対して、業務上必要な指揮命令をすることができます。
そのため、メールやウェブアクセスを監視したり、ウェブカメラで自分の姿を撮影させて監視したりすることも、業務上の必要性が大きいのであれば認められる場合もあります。
業務上の必要性としては、会社が従業員の業務の遂行状況の確認や、労働時間の管理、業務上の情報の管理などが挙げられます。
特定の従業員のみを狙い撃ちにしたり、個人的な好奇心から監視をしている場合には、不当な目的があるとして、プライバシー侵害となる可能性があります。
従業員のプライバシーに配慮した監視の方法になっているかという点も考慮されます。
具体的には、撮影の対象を監視の目的達成のために必要な範囲に限定されているか、撮影時間は業務時間に限定されているか、撮影された映像は目的外使用がされていないか、撮影された映像は権限のある者のみが見ることができるようになっているか、などという点を考慮することになります。
従業員を監視する場合、監視の根拠となる就業規則が定められており、その就業規則が従業員に周知されているかどうかという点も考慮されます。
もし就業規則に何ら監視の根拠となる規定がないにもかかわらず、監視がなされている場合には、プライバシー侵害となる可能性があります。
また、監視の実施について責任者と権限、ルールが定められているか、そのルールに基づいて監視がなされているかという点も考慮する必要があります。
従業員にとっては、監視によって不要なストレスを受けることになり、業務に悪影響を及ぼす可能性もあります。
このような従業員の不利益を上回る監視の必要性があるといえる場合でなければ、監視はプライバシー侵害となると考えられます。
以上のように、従業員の監視は様々な要素を考慮してプライバシー侵害かどうかが判断されます。
プライバシー侵害にあたる場合は、それによって被った精神的な苦痛に対して慰謝料を請求することも可能です。
会社からの監視が度を越えている場合には、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
なお、監視以外のハラスメントについては、下記記事も詳しいので併せてご参照ください。